君は僕のもの 【続】
「意地悪意地悪」
けどどんなに睨みつけても彼の心を煽ってしまうだけ。
逆に楽しそうな顔をして、
樹はあたしの髪に指を絡めてチュッと口付ける。
それがくすぐったくて身を捩じらせて片目を薄く閉じると、瞼にまたキス。
チュッというリップ音が耳に入る。
そしてもう一度ゆっくりと顔が近付いて来て…目を閉じる。
後数センチ。
……キーンコーンカーンコーン…
「……。」
「……。」
鳴り響くチャイムの音、上の階から聞こえる椅子の音。
生徒の会話や先生の声。
そんな音があたしを正気に戻した。
「…あっ!」
そうだ!授業……
何だかんだで結局あたしまた授業サボっちゃったよぉ。
しかも朝教室に行っただけで、これじゃぁ休んだのと同じだよね。
チッと舌打ちをすると樹はようやくあたしの上から退いてくれた。
「帰ろうかな…」
ボソッと呟いて立ち上がると『ん』と一言だけ言ってあたしに手を差し出す。
「…授業出ないの?」
手を伸ばして樹の手を握るとギュッと握り返してくれる。
「出たくない」
子供みたいに駄々を捏ねてばっかの樹が何だか可愛く見えて、プッと吹き出すようにして笑った。