紫陽花のブーケ


でもやっぱり、私は相当追い込まれていたようで、別荘に着いた途端倒れてしまい、おじさんたちを慌てさせてしまった

一日入院しただけで、退院できたけど、夕香里やおじさんたちにものすごく怒られた
そして自分だけの体じゃないんだから無理しないこと、周りにも頼ることを約束させられた

私も反省して、それからは甘えさせてもらっている

無理しても何ともならないのが今の私の体なんだし、子どもに何かあったら黙っていなくなった意味無いもんね

最初の頃は慣れない環境とこれまでの疲労から、なかなか床を上げられなかったけど、GWが過ぎたころからつわりが軽くなって食事の量も増えて

6月の今はこうして外に散歩できるくらいは元気になった

検診の結果も問題ない範囲だし、良い兆候

起き上がれるようになると早速、夕香里が新しい仕事を紹介してくれた
無事出産して子どもを預けられるようになるまでは、在宅でできる範囲でいいからと
何から何までお世話になりっぱなしだけど、「落ち着いたらこきつかうからかまわない」と、いい笑顔で言われた




針よりも細く柔らかく降る雨の中、ゆっくりと歩きながらつらつらとこれからの計画を立てているうちに目的地に着いた

明月院は紫陽花寺として鎌倉でも有名な観光スポット

さすがに雨の日は人々の足も遠のくので、今日の撮影はここですることにしたのだ

ご近所に住む人の特権である

雨に濡れた参道をたくさんの紫陽花が彩り、緑の葉に大小さまざまな大きさの宝玉のような雫が宿っている


「いい写真が撮れそう」


私は独り言ちると、青や紫や白等の様々な色に囲まれた参道へと足を踏み入れた





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