闇の果ては光となりて
質のいい品物なのに、いまいちピンと来ないなぁ。
かっこいいけど、霧生って感じがしないし。

「如何ですか?」
「あの···猫のデザインとかありませんか?」
「猫ですか?」
「はい、猫です」
「···はぁ、そう言うのはございませんね」
「ですよねぇ」
困惑した顔で私を見る店員に苦笑いを浮かべた。
うん、無いと思ってたよ。
念の為に聞いて見ただけだしね。

「よう、いいの見つかったか?」
背後から聞こえた声に振り返る。
「あ〜あんまりピンと来なくて」
「そうか。なら、別の所見に行くか」
「うん、色々見てみたい」
わざわざ商品を出してくれた店員には悪いけど、もう少し吟味する必要が有りそうだな。

「コウは欲しい物見つかった?」
「ああ。俺はこれを買う」
口角を上げ、見せてくれたのはゴツゴツした感じのネックレスで、トップにキラキラ光る石の付いた十字架がデザインされた物だった。
「これって、霧生のプレゼントじゃないよね?」
「当たり前だろうが。俺のに決まってんだろうがよ」
決まってるのかよ···。
やっぱり、コウはプレゼントじゃ無く自分の装飾品を探していたみたいだよ。
「な、なんだよ」
複雑な表情で自分を見る私にコウが戸惑いを見せる。
「あ、うん、いいんだけどね」
まぁ、好きな物を買えばいいと思うよ。

「神楽ちゃーん、次は僕のお気に入りのお店行こ」
トコトコとやってきた光が私の手を掴んで愛らしく笑った。
「うん」
光も自分の物を優先して買うんだろうなぁ、と思いつつ頷いた。
商品を見せてくれた店員にお礼を言って店を出る。
私達が出て来た途端に、黄色い悲鳴が上がり周囲はざわめきに包まれる。
毎度毎度、ご苦労さまな事だよね。
いちいち騒がれる事に、うんざりしながら、光に案内されるままに彼のお気に入りのお店を目指した。
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