闇の果ては光となりて
谷本さんと充希は引っ越し屋さん顔負けの手際で、階段を器用に降りた。
先に降りて、1階からその手際の良さを感心してると、あの2人は引っ越屋さんでバイトしてると光が教えてくれた。
通りで···上手いはずだよね。
荷物を持って玄関まで辿り着くと、そこにはもう母親の姿は無くて。
多分、寝てるんだろうなぁとぼんやり思った。
あの人の中には、私の存在なんてない。
それを寂しいと思わなくなったのは、何時だったかな。
靴を履いていると、家の前に車が停まる音がした。
あいつが帰ってきたのかも、そう思った途端に多分顔が青褪めたんだと思う。
「心配ないよ。絶対に神楽ちゃんには近付けない」
光が私の心を読んだように欲しい言葉をくれた。
「うん、そうだよね」
頷いてドアに手を掛け押し開けた。
案の定、家の前に駐車していたのはあいつの車で、まだ車から出てくる気配はない。
震えそうになる手をノブを握り締めることで必死に止めた。
「神楽ちゃん、ドア開けておいてくれる?」
「う、うん」
少し外に出て片手でドアを押さえた。
「谷本と充希先に出て、車の運転席の前でドアが開かないように待機。長谷川は車の前に出て。神楽ちゃんは俺と一緒に行こうね」
光が的確な指示を飛ばすと、3人が一斉に動き出す。
「ありがとう、光」
「これぐらい仲間ならどうってことないでしょ?」
光がドアから出るまでに愛らしく微笑んで私を見た。
本当に優しいね。
チーム【feral cat】は、私のこれから過ごす時間を今よりずっとずっと素敵なものにしてくれるに違いないと、確信した。
勇気を持って新しい一歩を踏み出す。
1人じゃないと思える事がこんなにも心強いものだったなんて知らなかったな。
自分を睨みつける3人のヤンキーに気付いたあいつは、車の中で固まったまま動けない。
私は奴の顔を見る事もなく車の横を通り過ぎ、通りへと歩み出た。
光はそんな私の横に寄り沿ってくれている。
「帰るよ、皆」
彼の一声で、義父を睨みつけていた3人がこちらへと移動してきた。
私は車に背を向けているけれど、ドアの開く音はまだ聞こえない。
ゆっくりと歩き出した私達の目的地は、仲間の待つ溜まり場。
あんなに怖かったのが嘘のように、心が軽いのは光達が居てくれるからだね。
総長の言う通り1人で来なくて良かった。
戻ったら、総長にもお礼を言わなきゃね。
少しだけ傾いた太陽を背に私達は他愛もない会話をしながら、ゆっくりと進んだ。
街ゆく人々の様々な視線を浴びながら。
その中に、不穏な視線が一つ紛れていたことに気付けなかったのは、義父とのニアミスを回避出来た安心に気が緩んでしまっていたからなのかも知れない。
先に降りて、1階からその手際の良さを感心してると、あの2人は引っ越屋さんでバイトしてると光が教えてくれた。
通りで···上手いはずだよね。
荷物を持って玄関まで辿り着くと、そこにはもう母親の姿は無くて。
多分、寝てるんだろうなぁとぼんやり思った。
あの人の中には、私の存在なんてない。
それを寂しいと思わなくなったのは、何時だったかな。
靴を履いていると、家の前に車が停まる音がした。
あいつが帰ってきたのかも、そう思った途端に多分顔が青褪めたんだと思う。
「心配ないよ。絶対に神楽ちゃんには近付けない」
光が私の心を読んだように欲しい言葉をくれた。
「うん、そうだよね」
頷いてドアに手を掛け押し開けた。
案の定、家の前に駐車していたのはあいつの車で、まだ車から出てくる気配はない。
震えそうになる手をノブを握り締めることで必死に止めた。
「神楽ちゃん、ドア開けておいてくれる?」
「う、うん」
少し外に出て片手でドアを押さえた。
「谷本と充希先に出て、車の運転席の前でドアが開かないように待機。長谷川は車の前に出て。神楽ちゃんは俺と一緒に行こうね」
光が的確な指示を飛ばすと、3人が一斉に動き出す。
「ありがとう、光」
「これぐらい仲間ならどうってことないでしょ?」
光がドアから出るまでに愛らしく微笑んで私を見た。
本当に優しいね。
チーム【feral cat】は、私のこれから過ごす時間を今よりずっとずっと素敵なものにしてくれるに違いないと、確信した。
勇気を持って新しい一歩を踏み出す。
1人じゃないと思える事がこんなにも心強いものだったなんて知らなかったな。
自分を睨みつける3人のヤンキーに気付いたあいつは、車の中で固まったまま動けない。
私は奴の顔を見る事もなく車の横を通り過ぎ、通りへと歩み出た。
光はそんな私の横に寄り沿ってくれている。
「帰るよ、皆」
彼の一声で、義父を睨みつけていた3人がこちらへと移動してきた。
私は車に背を向けているけれど、ドアの開く音はまだ聞こえない。
ゆっくりと歩き出した私達の目的地は、仲間の待つ溜まり場。
あんなに怖かったのが嘘のように、心が軽いのは光達が居てくれるからだね。
総長の言う通り1人で来なくて良かった。
戻ったら、総長にもお礼を言わなきゃね。
少しだけ傾いた太陽を背に私達は他愛もない会話をしながら、ゆっくりと進んだ。
街ゆく人々の様々な視線を浴びながら。
その中に、不穏な視線が一つ紛れていたことに気付けなかったのは、義父とのニアミスを回避出来た安心に気が緩んでしまっていたからなのかも知れない。