相思相愛ですがなにか?
(伊織さんはここに住んでいるのね……)
ベッドの上に無造作に置かれたパジャマ、洗面所に置いてある歯ブラシ、飲みかけのコーヒーカップ。
どこを見ても伊織さんの気配がして、すべてが新鮮だった。
私は夢見心地になって、あっちへふらふら、こっちへふらふらとゾンビのように部屋中を徘徊しまくった。
そんな私を遠目に眺めていた伊織さんが、気落ちしながら謝ってくる。
「……こんなことになって本当にごめんね」
「いいえ!!不運な事故ですから!!」
「いや、雫に任せっきりにしていた俺がいけなかったんだ。やっぱり最終チェックには俺が立ち会うべきだった」
伊織さんは監督者としての責任を感じ、後悔を口にしていたが、そもそも水漏れの件は嘘なので、当然どれだけ手を尽くそうと無駄である。
何も知らずに不手際を詫びる伊織さんにチクンと心が痛み、罪の意識を感じた私は誤魔化すように大げさにお願いした。
「あの!!屋敷の中も案内してもらえませんか!?」
伊織さんは唐突なお願いに驚いていたようだったが、すぐに快諾してくれた。