相思相愛ですがなにか?
話がそうと決まると伊織さんの行動は素早かった。
「どうぞ」
伊織さんはそう言うと東棟にある自室の扉を開け、私に先を譲った。
「お邪魔しまーす……」
興奮と緊張が半々くらい入り混じるなか、遠慮がちに伊織さんの部屋に足を踏み入れる。
(うわあ……)
50平米はあろうかという広々としたお部屋には二人で寝るには十分な大きさのベッド、天井まで続く本棚、整理整頓されたデスク、ソファとテレビボードがホテルのスイートルームのように綺麗にレイアウトされていた。
専用のトイレとシャワールームも完備されていて、この部屋だけで暮らしても何の支障もなさそう。
「バッグはここに置いておくね」
「はい……」
伊織さんが南城家から持参したボストンバッグをクローゼットの前に置いてくれたが、今はそれどころではなかった。
私は伊織さんらしい無駄をそぎ落としたシンプルな部屋に心を躍らせていた。