相思相愛ですがなにか?
私は、1時間前の浮かれた気分から一転し、土砂降りの雨に振られたようなどんよりとした面持ちで伊織さんに謝り倒したのだった。
「ごめんなさい……」
「仕事なら仕方ないよ。レストランは別の日に行けばいいさ」
折角、伊織さんとロマンティックな夜を過ごせると思っていたのに……!!
ああ、悔やんでも悔やみきれない!!
仕事と恋の板挟みになった結果、仕事を取ったのは恋に生きる私にとって苦渋の決断だった。
「代わりといってはなんだけど、俺も月子ちゃんが出るショーを見に行ってもいいかな?」
デートの約束を反故にされ非難するどころか、逆にショーを見に行きたいと申し出てくれた伊織さんには感謝の気持ちしかない。
これが両想いだったら、熱烈なキスでもお見舞いしたいくらいだ。
「もちろん!!社長に頼んでおくわ!!」
伊織さんが私に興味を持ってくれたことが嬉しくて、喜んで席の確保を引き受ける。
「頑張ってね」
「はいっ!!」
伊織さんが見に来てくれるなら、いつも以上に頑張らないとね!!
ステージの上で華々しく活躍する私を見たら、きっと伊織さんも私にメロメロになってくれること請け合いである。
伊織さんからの声援を受け、私は俄然やる気に満ち溢れた。
それからの日々は目まぐるしく過ぎていった。
これまでの花嫁修業に加え、ウォーキングのレッスンに出向き、休んでいる間に弛んだ身体を引き締めるためにせっせと筋トレに勤しんだ。
その合間を縫うように、伊織さんの仕事関係の人と会食したり、お兄ちゃんと一緒に挨拶回りにも出かけた。
伊織さんの婚約者として多忙を極める中、とうとうファッションショーの当日を迎えたのだった。