相思相愛ですがなにか?
「月子の結婚式には私も日本に帰るから。楽しみにしてるわね」
「え!?ちょっと待って!!ルー!!」
大きなあくびが聞こえたと思ったら、ルーはアスキムの取り扱いに苦労している私のことなど構わず電話を切ってしまっていたのだった。
時差を考えずに電話を掛けたが、カリウス王国は深夜のはずである。
当然、ルーには明日の仕事に備えて寝る権利があった。
身の潔白を証明したアスキムは意気揚々と私に尋ねるのだった。
「それで、婚約者とやらはどこにいるんだ?」
「……仕事に決まってるでしょう?」
「よし。では、会社まで行こう」
「え!?」
アスキムはそう言うと、運転手に藤堂製薬に向かうように指示をした。
車の進路を勝手にオフィス街に変えられてしまい、私はたまらず止めに入った。
「ちょっと待って!!いきなり行ったら迷惑でしょう!!」
「俺の来訪を嫌がる者がいるのか?」
常識など一切考えない言い草は、絵に描いたような傲慢なプリンスそのものである。
くっそう……。
だからアスキムは嫌なのよ。
ナチュラルボーンプリンスは、天上天下唯我独尊。
一事が万事、自分の思い通りになると思っているんだから!!
「彼に確認するから!!」
私はルーに続いて、伊織さんに慌てて電話を掛ける羽目になった。
(お願い出ないで……)
電話に出なければ、アスキムのお願いを断る良い口実になったのに、私の期待とは裏腹に伊織さんは電話に出てしまったのだった。