相思相愛ですがなにか?
「もしもし」
「伊織さん?あの……月子です。実は……私の友人がどうしても伊織さんに会いたいって言うんだけど……」
「友人が……?」
伊織さんは怪訝そうに、言葉の真意を尋ね返した。
普通の友人はわざわざ会社に訪ねてこないから当然である。
相手が相手だけにかいつまんで話すということがものすごく難しい。
アスキムのことをどう説明しようかと考えあぐねていると、くだんの張本人がひょいっと私の携帯を奪い取っていく。
「あ」
「カウリス王国第4王子、アスキムだ。月子の婚約者なら私の名前くらい聞いたことがあるだろう?」
「ちょっと何するのよ!!」
私の携帯を返してよっ!!
携帯を取り上げただけでは飽き足らず、勝手に伊織さんと会話するとは何事だ。
「こちらの方が話が早いだろう?」
携帯を奪い返そうと必死になって手を伸ばしたが、アスキムはあろうことかひとの顔を鷲掴みにし、腕を突っぱねて私から携帯を遠ざけたのだった。
狭い車内でジタバタしている間にも、アスキムは人の携帯で勝手に伊織さんと交渉している。
ようやく携帯を奪い返して弁解しようとした時には、電話は既に切れていた。
「許可はもらった。さあ、行くぞ。」
アスキムが得意満面でそう言うと、私の身体は怒りでフルフルと小刻みに震えた。
これだから、社会的地位のある男は傲慢で嫌なのよ!!