相思相愛ですがなにか?
「話というのは他でもない月子のことだ」
「私の婚約者について何の話ですか?」
月子ちゃんは自分の婚約者だと、軽くけん制するように言う。
呼び出された理由は半ば予想通りだったので、こちらも冷静に受け答えができた。
「正直に言って、私は君が月子の婚約者であることに不満に思っている」
俺のどこに不満があるというのか。
彼の不興を買うような粗相を働いたという自覚はない。
婚約にケチをつけられた俺は表情を険しくしたのだった。
「私は月子には多大な恩があってだな。常々いつかはその恩に報いる必要があると思っている。月子が意に沿わぬ結婚をしようとするならば止めねばならぬ」
意に沿わぬ結婚と言われ、心当たりがあってドキリとする。
月子ちゃんはこの婚約についてアスキム王子にどのくらい事情を話しているのだろう。
「以前の私なら愛があろうとなかろうとさして気にしなかったが、今は状況が変わったのだ」
アスキム王子は威圧するように立ち上がると、俺に向かって指を指した。