相思相愛ですがなにか?

「月子を幸せにする自信がないなら、婚約は解消するべきだ」

本来ならただの友人であるアスキム王子から婚約解消を打診される謂われはないのだが、月子ちゃんとアスキム王子の関係について邪推し疑心暗鬼に陥っていた俺は、ある結論に達する。

(まさか……アスキム王子が月子ちゃんのかつての恋人なのか……?)

最悪の想像をしてしまい、ドクンと心臓がざわめき、にわかに動悸が激しくなって、上手く息が出来なくなる。

アスキム王子と一対一で会ったことにより、パズルの最後のピースがパチリと嵌ったような気がした。

月子ちゃんがモデルとしての活躍を見て欲しいと望んでいたのも。

かつての恋人がアスキム王子のことだと考えるとすべて合点がいった。

アスキム王子も月子ちゃんに魅了されたひとりということなのか。

「少し……考えさせてください」

俺は衝撃の結論におののきながら、喉の奥から振り絞るようにそう言った。

気力を奮い立たせ何とか体裁を取り繕うと、這う這うの体でアスキム王子の元から退散したのだった。

< 196 / 237 >

この作品をシェア

pagetop