相思相愛ですがなにか?

「おめでとう、月子!!」

「ルー!!来てくれたの!?」

遠くカリウス王国からはるばるやって来てくれたルーとしっかとハグをする。

3年ぶりに顔を合わせたルーは、カリウス王国在住のせいかすっかり日に焼けていた。

「会いたかったわ!!」

「私もよ!!」

男性陣顔負けの熱烈なハグにルーの後ろに隠れていたアスキムが困惑した表情で棒立ちになる。

「アスキム王子」

伊織さんが私の代わりにアスキムに握手を求める。

「先日は大変失礼致しました。私はとんだ誤解を……」

「気にするな。きちんと説明していなかった月子が悪いのだから」

ルーはキョトンと大きな目をパチクリさせ、伊織さんとアスキムの話を聞いていた。


「何の話?」

「月子に横恋慕する不埒な男に間違えられた話さ」

ああ、伊織さんの顔色が見る見るうちに青くなっていく。

婚姻届を提出した後、なぜ婚約解消を言い出したのかよくよく話を聞いたところ、伊織さんはあろうことかアスキムと私を恋人同士だと勘違いしていたのだった。

アスキムとルーの結婚はカリウス国内でもまだ公にされておらず、事情を知らない伊織さんが誤解するのも無理はなかった。

そのおかげで、私はちょっぴり良い思い出ができたんだけど。

あんなに我を忘れて取り乱す伊織さんを見るのは、あとにも先にもあの時だけだろう。

強引にされるキスも良かったなんて言ったら、伊織さんに怒られちゃうのかもしれないけれど。

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