相思相愛ですがなにか?

「伊織さんもお元気でしたか?」

「ああ。大きな商談が決まって、最近やっと一息ついたところだったんだ」

「まあ!!そうだったんですね!!」

私はさも初めて知ったような反応をして、笑顔で相槌を打った。

……知ってる。

伊織さんの記事が掲載された経済新聞や雑誌は全部読み込んでいるもの。

ちなみに伊織さんが藤堂製薬の重役としてニューヨークでも意欲的に活動しており、目覚ましい成果を上げていることも知っている。

「月子ちゃんが雑誌の表紙になっているのも見たよ。すごく綺麗だった」

「伊織さんに褒めてもらえて光栄です」

澄ました表情で答えるが、テーブルの下では小さくガッツポーズをする。

(嬉しいっ!!)

意図せず褒められ天にも昇る気持ちだった。

私の小さな活躍も気に留めてくれていたなんて、すごく嬉しい。

初めては苦手だったモデルのお仕事だけど、頑張ってきて本当によかった。

もはや、伊織さんに褒めてもらうためだけに、モデルの仕事を続けているといっても過言ではない。

< 30 / 237 >

この作品をシェア

pagetop