極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

◇◇◇

その日の午後五時。貴行は社用車の後部座席から降り立ち、オフィスビル一階に位置するオーシャンズベリーカフェを少し離れたところから眺めた。

大きなガラス窓の奥に陽奈子の姿を見つけ、つい笑みがこぼれる。

陽奈子はお客にてきぱきと対応し、次から次へと注文の品を作っている。
とびきりの笑顔でドリンクを手渡された若い男性客は、陽奈子を盗み見るようにして何度もチラチラと視線を投げかけながら、店内のテーブルについた。

あの笑顔を向けられれば、そうなる気持ちもわからなくはない。とはいえ、貴行が複雑な心境になるのも事実だった。

こっそり店内に入り、お客の列に並ぶ。いよいよ貴行の番となり、カウンターに足を勧めた。


「いらっしゃいませ。ご注文は――」


ほかのお客相手同様の口上で顔を上げた陽奈子は、貴行に気づいて口を開いたまま数秒間フリーズした。
幽霊でも見たような顔だ。

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