極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

「そうよ。過去の話。不正疑惑があがって失脚したわ。それと同時に、月島との縁談も白紙になったの。お見合いの直前よ。会うこともないまま終わったの」


重苦しい話題なのに、早紀は淡々としていた。

(そういえばこの前……)

貴行の母、阿佐美とお茶をしたときにそんな話を聞いたではないか。

陽奈子が、これまでに貴行と結婚の話が進んだ相手はいないのかと質問したときのことだ。銀行の頭取の娘との縁談があったと話していた。
それが早紀だったとは……。


「でもね、私、大学生のときから両親に『将来はツキシマ海運の令息との結婚が控えているんだぞ』と言われ続けていたの。実際に会うことはなかったけど、経済関連の雑誌にたまに載っていたから、それを見て彼に恋したわ。未来の旦那様なんだって。それが突然白紙になるなんて、誰が思う?」


早紀は苦々しく言い、ハンドルをぎゅっと握りしめた。

車がスピードを上げていき、次々とほかの車を追い越していく。センターラインがものすごい速さで流れた。

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