極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

「毒が入っているとか考えないの?」
「えっ……」


反射的にカップをテーブルに置く。毒だなんて、まったく頭になかった。


「ふふふ。冗談よ。そんなものは入れてないわ。陽奈子ちゃんってば、本当に人を疑わないのね」


あっけらかんと笑い声をたて、早紀はソファの背もたれに身体を預けた。

陽奈子だって、誰彼かまわずに信じているわけではない。早紀だからこそ信じたのだ。
たった数ヶ月しか一緒に仕事をしていないけれど、それでも早紀は信用に足る人間だったから。

陽奈子は出されたコーヒーにふうふう息を吹きかけながら飲み干した。自分は早紀を信じていると、見せつけたかった。

カップを置き、早紀を真っすぐ見つめる。


「早紀さん、帰りましょう」
「やだ、なに言ってるの? 今話したでしょう? ターゲットを陽奈子ちゃんに変えたって。月島貴行に思い知らせてやるのよ。私を侮辱したことを後悔させてやるの」

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