極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

陽奈子が生まれたときすでにあった工場は、物心ついたときにはあたり前の存在だった。
工場の従業員みんなが家族のようでもあったし、娘や妹のようにかわいがってもらってきた。

それがなくなるということは、陽奈子の居場所を失うも同然。そんな事態にはしたくない。


「本気なのか? 本当に望まない結婚をするつもりか?」
「それを言うならお相手のほうじゃない?」


ツキシマ海運といったら、従業員四十人程度の工場とは比べものにすらならない企業。
そんな大会社が、吹けば飛ぶような工場の娘との結婚を選択するとは、いったいどういう考えがあってのことなのだろう。

ほかにいくらでも良家の令嬢との縁談があってもおかしくない。


「いや、お相手の月島家たっての希望なんだよ」
「私との結婚が?」
「そうなのよ、陽奈子。ご丁寧に何度かうちに足を運んでくださってね」


昨夜話を聞いたとき、陽奈子はこちらから取引先のツキシマ海運に借金を肩代わりしてもらえるよう願い出たのかと思っていた。
そしてその結果、自分との縁談が進められたのだと。

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