極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

もしもマルタ島で会ったときにフルネームで聞いていたら。いや、いくらそうであってもツキシマ海運と結びつけられはしなかっただろう。
自分とは縁遠い世界の人間だから。


「陽奈子、こちらがさっきお話しした方よ」
「ツキシマ海運で社長をしております。一年前に父が他界し、社長職を引き継いだばかりの未熟者ですが」


貴行は仰々しく口上を述べた。
陽奈子はそれに「はぁ」と気の抜けた返事しかできない。

マルタ島で会った貴行が、かのツキシマ海運の社長だったとは。陽奈子の結婚相手になる人だとは。
驚きの連続で頭の中がまとまらない。


「先ほどご両親からお返事を聞かせていただきましたが、私との縁談を進めてくださるということでよろしいでしょうか?」
「は、はい……」


蚊の鳴くような声になった。


「陽奈子、しっかり返事なさい。月島さん――いや、貴行さんに失礼だぞ」


豊に軽く叱責され、背筋をピンと伸ばす。

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