極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

(え? どういうこと? 貴行さんが私の結婚相手、なの?)

頭の中はパニック。それこそ縦横無尽に車が行き交うような状態とでもいったらいいのか。
事態がまったく飲み込めない。

驚く陽奈子と対照的に、貴行は落ち着き払った様子だ。口角をわずかに上げ、穏やかな表情で陽奈子を見ている。


「陽奈子ったらどうしたの?」
「えっ、あ、うん……」


未恵に声をかけられ、ようやく言葉が途切れ途切れに出てくる。それでもまだ混乱の真っただ中だ。


「月島さん、すみません。この子ときたら、月島さんに見惚れてしまったようで」
「いえ、お気になさらず」


貴行は冷静かつスマートに返す。

ここでマルタ島での話を持ちださないということは、豊と未恵には旅先で会ったと話していないのだろう。初めて会った体裁を崩す様子はない。

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