悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
「今日はリリーに何かできたのっ!? それとも今から!?」
「……あー、えっと。そうねぇ……」

 何をするか作戦を全く立ててない私が歯切れの悪い返事しかできないでいると、次はジェナが目をキリッとさせ私に向けてこう言った。

「そういえば目撃者がいたようで小耳に挟んだことなのですが――貴女今日リリーとアル王子とハロルド様とお茶をしたんですってね?」
「えっ」

 何故それを……! 目撃者がいたなんて聞いてないわよ!

「えぇーっ!? そうだったのマリア! お姉様いつの間にそんな情報を! ジェマ聞いてないよぉーっ!」
「マリアと一緒にジェマの反応も楽しもうと思って内緒にしてたんですのよ」
「意地悪ぅ! マリアもずるいよぉ! ジェマもお姉様も他の子だって、まだ王子とちゃんと話せてもないのに……騎士団長様もいたなんてマリア羨ましすぎるうぅーーっ!」

 クールにじっと私を見据えているジェナとぎゃーぎゃーと騒ぎ立てるジェマ。双子なのにシンクロ率は0パーセントだ。
 ちなみに騎士団長様がいて羨ましいって感情だけは間違ってるからすぐ捨てた方がいいわよジェマ。

「そうね。確かにお茶は行った。でもそれはリリーと王子を二人でお茶させない為。私が昨日のことでハロルドに怒られてた時の出来事だったから、ハロルドも巻き込んで一緒に二人の邪魔をしたのよ」

 ――っていう設定で行こう。そうしよう。
 
「……そういうことでしたのね。それで、お茶会はちゃんと邪魔できたんですの?」

 ジェナの視線が柔らかくなった。私が抜け駆けしたとでも思っていたんだろうか。

「もちろんよ。私はその場でなんと……! リリーのシュークリームに今度はタバスコより辛いデスソースを入れてやったのよ」
「ひえぇ! デスソース! 名前から物騒!」
「一体リリーはどうなったんですの!?」
「……申し訳ないけど私の作戦は失敗に終わったの。だってリリーってばそれに気づいて、自分の代わりにハロルドに食べさせたのよ!」
「「ええぇぇ!?」」

 あ、今のはシンクロ率100パーセント。
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