愛を捧ぐフール【完】
 セウェルス伯爵はそうかね、と一言私に残してまた挨拶回りを再開する。
 その時、一際目立つ父娘が最後に会場に入ってきた。


 真っ直ぐな金髪を全て後ろに流した切れ長の紅色の瞳の男の人、王太子派筆頭のアウレリウス公爵。
 そしてその隣を歩くのは、綺麗に巻かれた金髪にアウレリウス公爵と同じ色をした大きな瞳の美少女、アウレリウス公爵令嬢オリアーナ様だ。


 ファウスト様の、婚約者。


 かつての私と同じ立場にいる人だ。
 社交界に出る上でどこかで会うとは思っていた。幸いにも、ファウスト様の隣にオリアーナ様がいる姿を見た事はないが、この先社交界に出入りしていたら避けられないだろう。


 ちゃんと、平然と彼らを見ることが出来るだろうか。
 それと同時に、ファウスト様は私がセウェルス伯爵の隣に立つ事をどう思っているのだろうか。


「クラリーチェ。次はアウレリウス公爵の元に挨拶へ行くよ」

「はい」


 オリアーナ様を目の前にしても平然と、だ。


 昔あれ程、テレンティア様に感じた嫉妬を抑えて私は穏やかな王妃を演じたのだから、今世だって出来る。
 意識的に自分の心を無にして、セウェルス伯爵の斜め後ろに控えた。
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