愛を捧ぐフール【完】
 静かだった後宮は一気に華やかになり、跡継ぎの問題を危惧していた貴族達もしばらくは静かになりました。
 王妃様も度々側室様方との交流を持たれておりました。

 王妃様はとてもアルガイオ王国内で大きな貴族の令嬢でありましたし、側室を娶られた後でも王様は王妃様をご寵愛なさっておられたので、王妃様の立場が崩れる事は無かったのです。

 しかし、時の移りとは残酷なものです。

 王国の隣にあるホノリスという国が蛮族に攻め込まれ、滅亡寸前まで追い込まれてしまいました。


 隣国の王様はアルガイオ王国の王様に娘である王女を側室として差し出し、ホノリス王国の支配権を委ねる代わりに、蛮族から国を守って欲しいと頼んだのです。


 ホノリスを助ければアルガイオ王国の一部となる。
 そう考えた王様はホノリスの王女様を側室に迎え入れ、ホノリスを狙う蛮族を見事に追い払ったのです。


 王国中が勝利に湧き、訪れた平穏に歓喜しました。
 ですが、王妃様だけ憂鬱でした。
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