愛を捧ぐフール【完】
 項(うなじ)のところで一括りにした、緩くウェーブのかかっている銀髪に薄氷色の切れ長の瞳。中性的な容姿は11歳という年でも、将来美青年になるであろうと皆が噂していた。

 深窓の姫君だった私の所にも噂は伝わってきていたし、クリストフォロス様と同い年で仲の良かった兄がクリストフォロス様についてよく話してくれていた。

 だから、貴族議会の一員である私の父がクリストフォロス様と私の結婚話を持ってきた時は、誰もが身分も年齢も釣り合うお似合いの夫婦になるだろうと祝福してくれた。

「はじめまして、お姫様。僕はクリストフォロス。将来君の夫になる者だよ」

 私の住む邸の中にある庭園。咲き誇る花々の真ん中で、私の前に跪いてニコニコと優しい微笑みを向けてくれた彼は、間違いなく物語に出てくる王子様そのもの……いや、それ以上だった。

 家族と仕えてくれる家臣以外の男の人と会ったことがなかった私は、噂以上の彼を見た瞬間完全にのぼせ上がってしまったのは言うまでもない。

 これが祝福された婚約で、彼も私の事を好きでいてくれていたので何の問題もなかったけれど。
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