アイスクリームと雪景色
急いで考えを巡らせる。なんでもいい。この子に捕まらないように、皆と行動するのだ。そう、里村と一緒に――

「スキー場よ。ほら、この近くにあるでしょう」

美帆は、スキー場があるであろう方向の山をビシッと指差す。

ルナはゆっくりと、その指先へ視線を向ける。口からでまかせと思っているらしく、疑わしそうな目つきで美帆に振り返る。

(嘘じゃないわ。そうだ、スキー場に行けばいいのよ)

バスの運転手が提案したように、センターハウスで温泉に浸かり、一杯飲むというコースでいこう。スキーをやらなくても、十分楽しめる。

「ホントですかあ?」

「本当よ。みんな、全員一緒にね」

これは付け加えなければならない。いくらルナでも、メンバーが揃った中に入って来れないだろう。

「……もう出ようっと。このお湯、熱すぎ!」

忌々しげに言うと、ぱしゃんと湯を叩いた。飛沫が美帆の顔にかかるが、我慢する。ここで何か言って、引き止めたくはない。

ルナが内湯に入るのを確かめると、ずるずると湯に沈んだ。いつの間にか他の客も湯船を出て、美帆は一人きりだった。

「ああ、つか……れ……た」

こんな熱いお湯に、よく長時間浸かっていられるものだ。

ルナの執念は、理解不可能。

明日は決して一人きりにならないようにと、自分に約束する美帆だった。
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