彼女を10日でオトします
 私の体が、自然に、勝手に、たすくさんの体に倒れこんでいく、と錯覚するほどたすくさんの腕は繊細な力加減で抱き寄せる。

 たすくさんの腕が背中に回った。

 私は真綿になったような気がする程、たすくさんは、優しく、丁寧に私をその腕で包み込んだ。

「だいじょーぶ」

 耳元でそう囁く声が聞こえた瞬間、せきを切ったように涙が溢れ出した。

「キョンはね、大丈夫なんだよ」

 背中をさする手のひらが、ドレスのレース越しに温かくて、そこが妙にじんじん熱くなって、私の神経は、たすくさんの声が聞こえる左耳と、熱い背中、完全に二分された。

 誰かに抱きしめられながら、泣くのって、どうしてこうも……。

 その『誰か』が特定の人物を指すのかは、わからないのがもどかしい。

 私の涙が枯れた頃、たすくさんは口を開いた。

「俺ってさ、何も理由を聞かないで慰めてあげられるほど、人間できてないのよ。
今はいいや、ちょっと早いけど、飯にしよう。
食べ終わったら、俺、訊くから、ね?」

 私は頷くことしかできなかった。

 たすくさんの、柔らかい物言いだけれど噛み締めるような力強い口調に、今度ばかりは、「たすくさんには関係ないわ」では、回避しきれないと強く思った。
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