彼女を10日でオトします
 たすくさんの右手が背骨をなぞるように首に向かって移動する。
 その手つきに、高いところから落ちたときみたいな浮遊感に襲われてぞくりとした。

 肩甲骨のあたりで、たすくさんの手は止まり、ジ、ジジという振動が背骨に伝わる。

「ち、ちょっと、何してるのよ」

 それは、背中にあるファスナーを下げる時の感じと酷似していて、私は慌てて尋ねた。

「何って、お着替えの手伝い」

 飄々とした声は、さらに続ける。

「ひとりで着替えが出来なくて、困り果てて泣いてたんじゃなかったのお?」

 そうじゃないってわかってる癖に!!

「ひとりで着替えぐらいできるわよ!!」

「あ、そう? 別にそれはどっちでもいいんだけどね。
だんだん体が熱くなってくるキョンを抱きしめてたんだよ?
むらっとくるのは、男の本能でしょ」

 なんて軽口を叩きながら、さらにファスナーを下ろし続ける。

「いい加減にしなさい!!」

 たすくさんの両肩を強く押すと、たすくさんはいともあっさり私から離れてた。

 それから、にっと口角を引き上げて、

「ほい、いつものキョンちゃんの出来上がりい」

 と。

「俺、先に行ってるから。
あ、店の方は、『CLOSE』にして鍵しめてあるから安心して」

 とだけ言い残して、部屋を出て行った。

 な、なんなのよ……。

 閉まったばかりの扉をしばらくの間、私は、ただ、呆然と見つめていた。
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