彼女を10日でオトします
白いブラウスに細身の黒い綿パンツに着替え終えて姿見に全身を映す。
きっちりパンツにブラウスを入れた鏡の中の私は「警戒心丸出しです」って感じがしてちょうど良い。
その割りに、ゆるいウエーブをかけて腰の辺りまで広がる長い黒髪がだらしなく思えて、ひとまとめに結わくことにした。
ダイニングキッチンに行くと、たすくさんは、4人掛けのダイニングテーブルに突っ伏して固まっていた。
寝ているのかしら。
たすくさんは、よく寝ている、というイメージがある。
寝ている、という語感は何だか違うような気がするけれど、実際、寝ているのだから言葉としてはあっている、と思う。
学校で、休み時間の度に私の席の前を陣取るたすくさんは、私が移動教室でクラスを離れた後の休み時間、必ずと言っていいほど、私の席でカクンカクンと頭を揺らしているのだ。
夕食か……。
いつも、お姉ちゃんが用意してくれた夕食を私とたすくさん、二人で食べ、その後、店番タッチ交代で、お姉ちゃんと貴兄が食べる、といったぐあいなのだけれど。
ほんの少し期待を込めて、冷蔵庫の中を覗けば、案の定、期待は砕かれた。
おねえちゃんは、「適当に食べて」と言ったのだ。ラップがかかったおかずのお皿などは、冷蔵庫の中に存在しなかった。
……やっぱり、私が作るしかないか。
冷蔵庫を開けたまま、その中の材料とにらめっこ。
うーん……。
お姉ちゃんは、料理が好きだから、いつも冷蔵庫の中には材料が溢れている。
だけれど、出来上がったものを食べることのみが仕事の私には、どの素材が何に化けるのかすら、見当がつかない。
そのうち、ピー、という電子音に「早く閉めろ」と言われて手当たり次第の材料を取り出して、扉を閉めた。
腕に食材を抱えた食材をダイニングテーブルにそっと置いた。
セーフ。
そこに突っ伏しているたすくさんの茶色い髪の毛は、静止したままだった。