彼女を10日でオトします
「め、目覚めの一発には、最高だね!
……と、ところでキョンちゃん、味見、した?」

 一発?

 貼り付けたような笑顔。前髪の裂け目から覗く、たすくさんの額には、きらりと光るものがあった。汗?

「味見……そういえばしてないわ。そうよね、味見もしないで食べさせるのって、ある意味失礼よね」

 すぐに席を立って、小皿を食器棚から取り出そうとしたところで、

「キ、キョン、味見をしてないって事実を知っただけで、俺、充分だから!!
それはさ、う、うん、俺が食うから、ね?
キョンの分は俺が作ってあげるよ」

 大いに慌てた声で私を制した。

「どうして?」

「キョンがさ、すごくきらきらした目で、俺が食うのを見てたから……」

 と、わけのわからないことを笑顔のまま述べて、肩を落とすたすくさん。

 笑顔で肩を落とすなんて、たすくさんって器用なことするのね。

「たすくさんって、料理できるの?」

「俺もできないけど……ゴニョゴニョ……よりは、たぶん、まだ……」

 私の質問にたすくさんは、視線を泳がせながら、言葉を濁した。
 そんなことより『俺も』って言葉が妙にひっかかるのは気のせいかしら。

「というか、料理本さえあればできると思う。
キョン、ビギナー向けの料理本ってある?」

 料理本なら、どっさりある。
 料理好きのお姉ちゃんが、本屋に立ち寄る度に一冊は購入してくるから。

「たぶんあるわ。ちょっと待ってて」

 私は、ダイニングキッチンの隅にあるマガジンラックに向かった。
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