彼女を10日でオトします
 3杯目のコーヒー。カップの底が見え始めた頃、店の奥の扉が開いた。

 OL風の女の人がヒールをツカツカ鳴らしてレジに向かう。幾分すっきりした顔。
 この人、なにをしてすっきりしたんだかねぇ。

 女の人は、ブルガリの財布を小さな鞄から取り出すと、5千円札をお姉さんに手渡した。

 30分、5千円ねえ。高いのか、安いのか。

「どうでしたか?」とお姉さん。

「心配ごとがはれたわ」とOL風。

 ふうむ。怪しい宗教団体の容疑も浮上。 

 お姉さんにちいさく会釈をして、またツカツカ。そして、カランとドアを鳴らした。
 
 再び、二人きりの店内。

「どうぞ」

 一言だけかい。何か他に言ってくれないかねえ。笑顔のお姉さんは、店の奥の扉に手のひらを向けた。

 俺は、立ち上がって店の奥に歩みを進める。
 鬼が出るか、蛇がでるか。久々にわくわくするぜぃ。

 つるんとしたドアノブの手をかけて、息をひとつ吐く。
 少しずつ力を入れて、ドアを押す。

 ドアの向こうは、暗闇だった。

 

 
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