彼女を10日でオトします
 たすくさんと初めて会ったのは、お姉ちゃんの店。
 初めてだった。数字が見えないなんて。

 それから、たすくさんは、私の目を綺麗だと言ってくれて……。

 私は、たすくさんのこと『危険』だと判断したんだったわ。

 そこまで思い出して、私は自嘲した。
 私はたすくさんが危険だとわかっていた。それなのに。馬鹿だわ、ほんと。

 わたしは、しばらく回想していた。
 なにかヒントがあるのではないかと、私の乏しい記憶力を駆使して。

 たすくさんみたいに、抜群の記憶力を持っていたらいいのに。

 記憶力?

 たすくさんは、忘れることができないと言っていた。ブラックホールのように目にしたもの耳にしたものを全て記憶してしまう。

 うれしかったこと、悲しかったこと、全て。
 全てを背負いながら、生きてきた。

 そして、たすくさんは、自分で自分のお腹をさした。

 ちょっとまって。
 腑に落ちないわ。

 たすくさんは、自殺するような人かしら。
 不の感情を受け止めながら生きてきたような人が自殺なんてちっぽけなことするかしら。

 私の知ってるたすくさんは、計画的で、『ズル』がつくような賢さを持っている人。

 『自殺未遂』。言葉が悪いけれど、自殺を失敗した、ということよね。

 ……自殺を失敗するような人かしら。
 
 たすくさんのことだから、『自殺する』と決めた瞬間から、じっくりと計画を練ると思う。それこそ、失敗しないように。

 突発的な自殺?
 考えられないわ。たすくさんはあんな飄々としているけれど冷静な人よ。

 
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