彼女を10日でオトします
 できるだけの事をお姉ちゃんに話した。
 たすくさんとの9日間のこと、保健室で起きた琴実さんのこと。薬物のことは、いくらお姉ちゃんにでも言えなかったけれど。

 お姉ちゃんは、小さく頷きながら聞いてくれていた。


「そう。たすく君って政治家の息子だったの」

 ……そこ?
 いや、そこはあまり重要じゃないと思うのですが。

 ほら、たすくさんの中学生の頃の話とか、私がヤクザの事務所に行ったとか、食いつくところは、いくらでもあると思うわよ。

 やっぱり、お姉ちゃんってズレて――

「育ちがいい子だとは思ってたのよ」

 は?
 中学生で繁華街を徘徊してたような子を育ちがいいっていうのかしら。
 そんな話聞いたことないわ。

「私としたことが、どうして『戸部』で気づかなかったのかしら。ね、響ちゃん」

 ね、って言われても……。

「あら? 響ちゃん、もしかして気づいてないの?」

 お姉ちゃんは、目を一瞬丸くしてから「響ちゃんらしいけど」と微笑んだ。

「響ちゃん、戸部さんと面識あるじゃない」

 は?
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