彼女を10日でオトします
「キョン、捕まえたあ」
 
 キョンが、ローファーに足を入れた瞬間を見計らって、後ろから抱きしめた。
 
「はひっ!?」
 
 キョンの体は、ボールが地面に着地した直後みたいに、俺の腕の中で弾んだ。
 
「ちょっ……、何してるのよ!」

 強い口調。俺だって認識してくれたんだなぁって、何となくわかって嬉しくなった。
 
「ん? わからない? 抱きしめてるの」

 キョンの耳元で囁く。まずは、おどけた口調で。

「……わかってるわよ、そんなこと。いいから離して」

 ふうん。キョン、なかなかやるじゃん。ムキになって怒ると思ったら……ああ、もしかしたら、声が震えてるから怒ってるかしら?

「やぁだ。離れたかったら、暴れてみればぁ?」

 今度は挑発してみちゃったりして。

 次の瞬間、キョンはじたばたしだした。

 靴をしっかり掃いていないキョンは、案の定、バランスを崩す。
 タイミングよく腕に力を入れて引き寄せると、キョンは、後ろの俺に体を預ける形になった。

 作戦成功!

「キョンは素直で可愛いねぇ」

 なるべく甘ぁい声でね。ゆっくり、囁くように呟いた。

 
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