彼女を10日でオトします
 真っ直ぐ前を向いて、歩くキョン。結構なハイペース。

 俺は、キョンの左側にをキープしながら、次の言葉を探していた。

 横を見下ろせば、顔を隠す黒い前髪から、桃色の唇がちらっちらっとのぞく。

 ヘの字に曲がってることを差し引いても、すっげーうまそ。

「ねぇ、キョン。どうして手ぇ繋いでくれないの?」

 やっと見つかった言葉がコレ。わかりきったこと聞いてどうするんだろうね。
 全然冴えない。
 
 俺ってこんなに口下手だったっけ?

「…………」

 やっぱり無視、か。

 それでも、めげないたすく君は、意地になってバス停に着くまでひたすら話しかけ続けた。

 下校時刻まで学校にいることが少ないもんで、この時間のバスに乗るのは久しぶり。

 同じ制服を着た生徒さんが並ぶ、列の最後尾にキョンを前にしてついた。

「この時間って、人多いねー。座れるかなあ?」

「…………」

 ある意味、すっごい根性あるよ、キョンちゃんは。
 これだけ話しかけて、無視し続けられる子って、そうそういない。

 意思が固いっていうか、頑固っていうか。
 それとも、そうとう俺のこと嫌いか。

 ……最後の考えは、悲しいからデリート。

「そういえば、キョンさあ。一緒にかえろって無理に誘っちゃってごめんね。
もしかして、他の友達と一緒に帰る約束してた?」 
 
 前に立つキョンの背中が、ビクっと震えた。

 あ。失敗。教室での様子見てたら、だいたい予想できたはずなのに。
 思わず口に出ちゃった。

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