彼女を10日でオトします
「友達、いないから」

 はう。やっぱり。

 いくら声が聞きたかったからって、こういう事を言わせちゃうって最低よね。

 かける言葉も見つからないうちに、バスが来て、列はゆっくりと前に進む。

 キョンの三つ編みが左右に揺れる。

 キョンは、鞄から茶色いパスケケースを出して、運転手に見せた。俺は、パスモでピッ。

 バスの中は、座る場所はなかったけれど、ぎゅうぎゅう詰めってほどではないって混みぐあい。

 中ほど、終点しか開かない扉のあたりに立った。

 俺は腕を伸ばせばつり革を掴めるけど、たぶんキョンのポジションからじゃ無理。って位置にさりげなくキョンを誘導した。

 うん、俺って意地悪。

「キョン、危ないから、俺に掴まって?」

 我ながら白々しいねえ。向かい合わせに立つ、キョンの顔を覗き込む。

「結構です」

 お! だんだん会話が成立してきたぜぃ。
 睨まれちゃったけどね。

 ぷしゅーっとバスのドアが閉まって、「発車します」ってかつぜつの悪い運転手さんの声。
 揺れる車内の真ん中で、キョンは一生懸命踏ん張る。

 か、かわええ。

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