彼女を10日でオトします
 発進時の揺れは、頑張ってやり過ごしたキョン。

 ふんふん。どこまで俺に捕まらないで頑張れるかな?

「ねぇ、キョン。俺の大好物は、メロンフロートって言ったじゃない。
キョンの好きな食べ物ってなぁに?」

 キョンの頑張りを邪魔しようと、話しかける。

 だって、ほら、派手によろけて、しがみついてきてほしいじゃない。

 やっぱり無視だけどお。

 すると、キョンは、何か思いついたように、ぱっと顔を上げた。

「戸部さん」

 しかし、驚いたなぁ。まさか呼ばれるなんて思ってなかった。
 キョンは、じっと俺を見つめる。力強い視線で。

 “戸部さん”ねぇ。嫌な呼ばれ方。うーん。この際、仕方ないか。

「なぁに?」

 平静を装って、笑顔で返事したけれど、心臓がバカみたいに煩い。今まで、こんなことって無かった。

「私なんかに無視されて悔しくないんですか?」

 悔しい? 変な質問。

「悔しくはないよ。すっごく悲しいけどね」

 俺の答えに、眉尻をさげるキョン。

「ごめんなさい……」

 複雑な表情でポソっと呟いた。
 あまりに切ない声に俺は、無意識のうちに、キョンの頭を撫でていた。

「いーの。悪いのは、たぶん俺だし」

 
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