彼女を10日でオトします
「あっ、もしかしてキョンちゃん、やきもちやいてるー?」

「……冗談きついですよ、戸部さん」

「斬新! その切り替えし、はじめて!」

「そうですか」

 …………。

 くっそぉ。キャッチボール、5往復したのにい。これ以上会話が続かない!

 純情商店街の中を並んで歩く。
 喋ってないと死んでしまうはずの俺なのに、そこから一言も喋らなかった。

 喋らなかったというか、喋らなくても平気だった。

 俺がたった5往復に満足したっての? それとも、ここ純情商店街の柔らかい空気のせい?

 「喫茶メロディ」の控え目な看板は、昨日と同じく控え目にあかりが灯っていた。

「お姉ちゃん、ただいまあ」

 うわ。明るい声……。

 俺と喋ってたときは、ずーんとした声だったのに。たっしーショック……。

「お帰り。あら、たすく君と一緒に帰って来たのね」

「不可抗力でね」

 さらにショック……。もっと他に言い方ないのかねぇ、キョンちゃん。

「たすく君、そんなところに突っ立ってないで、早くこっちにいらっしゃい」

と、燈子さんは、にっこりと笑う。

 乱暴な手つきでカウンターに鞄を置くキョン。
 それを優しくなだめる燈子さん。

 燈子さんの笑顔見たら気づいちゃった。すっげー肝心なこと。
 俺、キョンの笑顔見てない……。


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