仮眠室で囁いて
「そりゃ嬉しいだろ。
今まで全然俺には関心なくて、むしろ嫌われてたんだから。
それが…こうして夕飯作ってくれて一緒に過ごせる。

このマンションは姉貴が住んでたんだ。
海外転勤で俺が住むことになっただけで俺の持ち物じゃないんだ。

想像を裏切って悪いな。
ここには誰も連れこんだことはないよ」

頬から顎に移った手が顔を上にむける。

「先にこっちつまみ食いしていい?」
親指が唇に触れる。

「ダメです!
そういえば、先生に伝言です…」

「なに?」

先生の動きがピタリと止まる。

「先生に謝っておいてって。
先生の大事な彼女に近づいてごめんねって。でも、泣かすようなことがあったら俺が黙ってないからって。……先生、ごめんなさい。

私……先生を悲しませるようなことしましたよね?」

先生が後ろから優しく抱き締める。

「なんのことだ?
アイツが麻美に言い寄っただけだろ?ヤキモチやいてムカつきはしたが、悲しんでなんかいない…ムカつくのなんてしょっちゃうだ。
麻美が可愛く皆に笑顔をふりまくから俺は毎日院内では不機嫌だ。

でもそれも今日で終わりだ」

首もとに柔らかな唇が触れた。
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