ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)
悔しい。


三神くんのこと、何も知らないのに。


三神くんがどんな人と繋がっていて、どんなことをしてきたのかは分からない。


でも、少なくとも私の知る三神くんは、人のことをみだりに傷つけたりしなかった。


勉強だって、途中で投げ出さなかった。


なのに、他の人の瞳に映る三神くんは違う。


噂だけで、平気でシャッターを降ろしてしまう。


努力をなかったことにしてしまう。


それが悔しくて、もどかしい。


でも1番悔しいのは、その声を聞きながらずっとこの場に留まったままの私の足だ。


そんな人じゃないって、言えなかった。


私はいつもいつも、他人に嫌われるのが怖くて強く自分を通せない。


そうやって何でもかんでも受け入れてしまうから、自分には背負えない役目を任されてしまうのだ。


分かっているのに、動けない。


いつか結んだ約束を、私はずっと破り続けている。


「……弱いなぁ、私」


小さく呟いた声が、周りの喧騒に掻き消される。


三神くん。


君はいつも、どんな想いでひとり過ごしていたんだろう。


背を向ける三神くんの姿が脳裏によぎって、ゴミ箱を握る手に力が入った。
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