ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)



放課後、三神くんは眠い目を擦りながら気怠げに登校してきた。


結局LHRが終わるまで姿を見せなかったから、今日はもう来ないのだと思っていたのだけれど、私に監督を頼んだ手前、悩んだ末にやって来たらしい。


『飯食うついで』とぶっきらぼうに言った割には、ちゃんと席について問題を解いてくれている。


私はというと、騙したまま勉強を教えることに良心が尋常じゃなく痛んでいた。


ましてや今日は勉強会も最終日。


明日のテストに向けての大詰めだ。


遠足がどうであれ、赤点が回避出来るに越したことはないけれど、やっぱり嘘をつくのは心苦しい。


あぁ神様、どうか2人にご慈悲を。


心の中で祈っていると、私をじっと見つめる三神くんと目が合った。


「どうしました?」


「……これどうすんの?」


三神くんはシャーペンの先で問題集をつつく。


どうやら解き方が分からないらしい。


「どうすると思いますか?」


「答え聞いてんだけど」


「答え聞いたら意味ないでしょ……考えるのが勉強ですよ」


「融通効かん女だな」


「なっ……」


固まる私を横目に、三神くんは参考書をパラパラと捲る。


答えを見ないのは偉いけれど、融通効かん女呼ばわりはいただけない。


私だっていっそ答えを渡せたらどんなに気が楽か。


元を辿れば全部志谷先生のせいなのに。


むくむくと湧き上がる不満が、私の唇をむぅ、と歪める。


すると三神くんはふっ、と息を漏らした。
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