ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)
「真に受けすぎ」


くすくす笑う三神くんは、まるで悪戯をした子どものようで。


文句のひとつでも言ってしまいたいのに、心が穏やかに澄み渡っていく。


うるさいです、と返すものの、私は自然と口角が上がっているのを感じていた。


やっぱり不思議な人だ。


隣にいるだけで、伝染するように心が温かくなる。


それはきっと、三神くんの心根が優しいから。


みんなが知らない三神くんを知っていることが、私は少し嬉しかった。


「そこさ、ふわふわしてないで俺のことも見てよ。ゴールが見えてくるとまだこんなにあんだって辛くなって心折れそうなんだけど」


大人しく問題を解いていたはずの篠宮くんが、ぐずぐずと泣き言を漏らす。


毎回終盤になるとこうして愚痴が増えるのはお決まりだったので、私は苦笑しながら篠宮くんにコーヒー飴を手渡した。


「コーヒーには気持ちを落ち着ける効果があるんだって。大丈夫ですよ篠宮くん。ちゃんと解けてきてるから」


やることはやった。


だからあとは気持ちの問題だ。


それにテストの点がどうであれ、2人とも遠足には行けるはず。


明日の今頃、喜ぶ顔を想像して心が弾む。


「同じクラスにいいんちょーがいてまじでよかった……和香ならこんなに優しくしてくれない……」


篠宮くんがコーヒー飴を口に放り込みながら呟いた時だった。
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