ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)
《──2年6組篠宮仁。数学準備室に来てください》


志谷先生の声が、教室と廊下に響く。


篠宮くんの顔がだんだんと渋く歪んで──


「くっそ志谷!」


ガタンと立ち上がる篠宮くんは数学係だから仕方ないとはいえ、テスト前日のこのタイミングは絶対わざとだ。


「あいつ今学校に残ってる数学係俺しかいないの知ってんだ!」


「ご愁傷さま」


「うっせバカ帆貴!」


もう最悪だと飴を噛み砕きながら半泣きの篠宮くん。


私はその背中をハラハラと見送った。


篠宮くんが志谷先生に取って食われませんように。


酷い扱いをされませんように。


「どうか無事で……」


教室のドアが閉まると同時に、三神くんがくつくつと笑いだした。


「いいんちょー、なんかズレてるよ」


何が?ズラが?


いやいや、私そんなのつけてないし。


「出兵?あんた篠宮の母さんか」


「それは和香ちゃんでは……」


「斉藤も大概だけどいいんちょーもでしょ。俺呼び出しくらった奴に無事でとか言う人間初めて見たわ」


「…………」


三神くんはケタケタと笑い続ける。
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