ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)
時間が一瞬、止まった気がした。


気まずそうに目を逸らす三神くんの髪が、風に弄ばれる。


三神くんは何が、とは言わなかったけれど、いつのことを言っているのかはすぐに分かった。


「違うの」


謝らせたかったわけじゃない。


だって三神くんは何も悪いことをしていなくて、謝る必要はどこにもなかったから。


三神くんが自分の意志で決めたことに、私が勝手に踏み込んだ。


分かったつもりになって、本当は何も分かっていなかった。


一緒に遠足に行きたいのも、もっと傍にいたいと願うのも、全部私の我儘だったのに。


それを、三神くんに押し付けた。


「謝らなきゃいけないのは私なの」


私は地面に着いた手を固く握る。


「ごめんなさ」


「分かってる」


「え……」


驚いて顔を上げると、三神くんの空を映した瞳と視線が合う。


たじろいでしまうほど、その瞳は真っ直ぐだった。


「いいんちょーが俺のこと気にかけて言ってくれたの、分かってるから。だから、ごめん」
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