Love Eater Ⅲ










「……………はて、ここはどこだったでしょうか?」

不意に我に返れば見覚えのない草原の真ん中。

その場に倒れていたでもなく、本当にハッと我に返ったらそこに在ったのだ。

見渡す限りどこか寂しさ覚える景観はモノトーンで、視界に捉えられるものと言えば今も足元で揺れている草や近くにある小川くらい。

「……不思議なところですね。川もあり風も吹き抜けているというのに無音とは」

なぜこんなところに立っていたのか。

そもそも、自分が誰であったのか。

まるで覚えのない自分の記憶にそんな疑問を抱いてはみても焦るような心は沸いてこない。

思い出さなければなんて焦燥感はまるでなく、ただ小さく息を吐くともう一度ぐるりと回りを見渡し。

「……死んだんでしょうかね?僕」

そんな結論を実に冷静に呟くのだった。

そんな風に冷静な自分に多少の驚愕はあれど、戻りたいという焦燥感がわいてこない。

と、いうことはきっと人生にも自分にも未練がないということなのだろう。
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