Love Eater Ⅲ
思い出せない中でもそんな予測の結論を打ち出したものの。
「……なんとなく、天国には行けないような人間だった気がしますが………まさか地獄にも行けないとは。……それとも、自力であの世の入り口を見つけ出すとこから裁判の始まりというやつなんでしょうかね」
とにかく、ここに立っていても仕方がないと、その歩みをどちらに向けようか再度視界を動かしてみた直後。
先ほどまでは人っ子一人いない無限の草原であったのに。
自分がいる位置からは少し遠く、今捉える景色には小川を越えんとする人の列がぼんやりと見えてくる。
なんとなくの無意識だ。
ああ、そちらに行くべきなのか。と頭より早く体が認識して歩き出したのは。
ここが死後の世界かなんて知らない。
そうであったとしても戻りたいという意志は自分に芽生えない。
寧ろ無意識にもあそこに惹きつけられるということはそれが今の自分に指示された行くべき道であるのだろう。
それに抗う気などまるでないのだから。
「抗うなんて……時間の無駄ですから」
そんなぽつりと弾かれた独り言さえ無意識。
本人でさえ言ったことに気が付いていないほど。
そんな小さな感情の吐露であったのに。
「………無駄なものなんてないのよ、坊や」
「………」
不意に耳を掠めた凛とした声音。
無音である空間では余計にその音はクリアに響いて印象に残る。