Love Eater Ⅲ
「まあ、時雨のせいと言えばそうなんだが…これが一概に時雨だけのせいとは言えないのも確かでねえ」
「一体何がどうなってやがる?」
「何かしたのは確かに時雨だ。だが、六花を死の淵に追い込んでいるのは六花自身」
「はっ?」
「自分の存在意味を無くしたのさ。リッくんを失った瞬間に」
「なっ…でも俺は死んでねえだろ?!死にかけたのかもしれねえが生きてた筈だ!」
「結果としてそうだったんだけど、ちょいとあの場では複雑な事情が入り組んでね。リッくんの命を繋ぎとめたのが蓮華くんなら、死んだと思わせたのも蓮華くんで、」
「はぁっ!?」
「蓮華くんを責めちゃいけないよ」
今ほど目覚めたばかりのソルトからすればこの状況は最悪に見えているのだろう。
それでも、その前の絶望的な状況を目の当たりにしてきた百夜からすれば寧ろまだ好転した状況であるのだ。
何があってのこの状況下であるのか。
ソルトから抜けている空白の時間の詳細を埋めていけば、次第にソルトの姿からも焦りの様なものは薄れて冷静が回帰し始める。
「色々…納得したよ。百夜がその姿なのは魔力不足であの姿を維持できない為ってわけだ」
「それもあるし、ここに居るにはあの姿じゃ難しくてね。政府お抱えの魔導師百夜様は半分人間の魔混じりでなきゃ都合が悪い。魔族だなんて知られようものなら実に面倒臭いだろう?」
「確かにな。…で?蓮華は?」
「蓮華くんもだいぶ魔力の消費をしてくれたからねえ。隣の休憩室で仮眠とりながら充電中ってところだね」
「そうか。じゃあ、残る今やるべき事は一つって事か」
諸々の事情は理解した。