オトナだから愛せない
「あの、皐月くん。もしかして、それを言うためにわざわざここで……待っててくれたの?」
「悪いか?」
「いえ、めっそうもない……です……」
「だってお前が、朝一あんな連絡よこしたから。今日はそれ以来連絡ないし」
「だって、皐月くんが連絡してくるなって言ったんじゃん……」
「それでも、いつもバカみたいに連絡してくるのが胡桃だろ」
「バカとは失礼な」
“おはようって直接言って”どうやら皐月くんは私が送ったそれを気にしてくれていたようで。
けれど、心配されているのか、バカにされているのかどっちなんだろうと思う。でもそんなこと考えなくたって私の心臓のどきどきは勝手に速くなっていくんだから間違いない。
皐月くんの不器用なその言葉が嬉しいってことは間違いない。
「てか、こんな時間まで、どこ行ってたんだよ」
「……学校ですが」
「なに?最近の学校はこんな遅い時間まで生徒を拘束するわけ?」
「いや、拘束って……。今日はたまたま委員会の集まりがあって」
「はぁー、遅くなるなら連絡しろよ」
「皐月くんて、いろいろ矛盾してるよね」
「うるさい。とにかくお前はいつも通りでいろ。俺に連絡したいならしてこい遠慮はするな。あと、遅くなる時の連絡は必ず」
「でも、連絡したら皐月くん、うるさいって言うもん……」
私を抱きしめていた皐月くんの体が離れていく。けれど私の手首はぎゅっと掴んだまま。