オトナだから愛せない
「あ、あの皐月くん、朝はごめんね。もうしつこく連絡とかしないし、朝だけじゃなくて日中ももう連絡しないから、あの……そんなに怒らないで……」
「……」
思わずぎゅっと俯きながら言いきった。皐月くんからの応答はない。あれ?許してもらえたの、かな?
「胡桃」
「は、はい」
名前を呼ばれて咄嗟に顔を上げる。
綺麗な顔が先ほどよりも至近距離にあって、思わず後ずさった。
と、するりと私の手首は皐月くんに捕まる。そのままそれを引かれて無残にも私は皐月くんの胸へダイブした。
自分の家の前でいったい私はなにをしているんだろうか。
久しぶりに触れた皐月くんからは、皐月くんの匂いがして、捕まっていないほうの手は行き場を失い思わずぎゅっと彼のスーツを握りしめた。こんなの心臓に悪い。
「胡桃、」
「……はい」
「おかえり」
「え、た、ただいま、です……」
「……」
「……」
皐月くんはそれだけ言うと、私を抱きしめる腕に力を込めてそのあとはなにも言わなかった。
あれ、もしかして、もしかするとあれですか?