オトナだから愛せない
「こんな夜はそばにいて」
私は、皐月くんの隣の家……?という表現があっているのかよく分からないが、同じマンションの皐月くんの家が601号室。
私の家が602号室。で、高校3年生を迎えてすぐにここで、ひとり暮らしを開始した。
両親はふたりとも健在で、このマンションから40分くらいのところにある、元々私も住んでいた実家で暮らしている。
ひとりでとくに不自由なことはないけれど、こんな日だけはひとりでいたくない。寂しい。というか、怖い。
窓の外は大荒れだった。
夜の真っ黒な空からは大粒の雨がボタボタとアスファルトを打ち付けるように降っていて、それと同時にゴロゴロ、ゴロゴロ世界を飲み込んでいくような音が鳴り響いていた。
あまりの恐怖にいつもの倍のスピードでご飯を食べ、お風呂に入って、よし!あとは寝るだけ!と、準備は整えたのだが。
耳に届くゴロゴロなのか、ゴォーなのかよく分からない雷の音が怖くて眠れない。
とりあえずベッドの上に避難し布団をかぶるという、防御にしては些か頼りない格好でぽつりとひとり、眠れない時間を持て余していた。
外では鳴り止むことなく、ゴロゴロと雷の音が響いている。と、突然ゴロゴロゴロゴロッー、と今までの音とは比じゃない音が鳴った。