オトナだから愛せない









と、再度震えたスマホは皐月くんからの着信を知らせた。




「皐月くん!」

《出るのはや》

「だって皐月くんからの電話嬉しいもん」




先ほどまでの残念な気持ちはどこえやら。皐月くんの名前を見て、嬉しくなってしまう私は本当に単純だ。



鳴ったスマホを耳元に当てれば優しい声音の皐月くん。相変わらずいい声ですね、なんて音にはせずに飲み込んだ。





「それで、それで、皐月くん!!私が送った質問の答えは?」

《あー、えーと、なんだっけ?》

「あ!!とぼけるなんてずるい!私の好きなところ教えてってやつ!」




私が問えば見事なまでに、すっとぼける皐月くん。一層清々しいよ。でもそんなに嫌ですか?私の好きなところ言うの。一応、夫婦ですよね?私の勘違いじゃないですよね?


というか皐月くんはどうして電話をしてきたのだろうか?




《じゃあ、俺の好きなところは?》

「え?」

《俺に聞くなら、胡桃も答えないとだろ?》




楽しそうな皐月くんの声音に、もしかして。いや、もしかしなくてもと嫌な予感。




「皐月くん」

《なに?》

「もしかして、それを聞くために電話してきたの?」

《……》

「ねぇ、なんで黙るの!?そーなんでしょ!」




黙りを決め込む皐月くん。絶対、絶対、絶対、図星だったんだ。電話越しで皐月くんの顔が見えないのがなんとも悔しい。



< 158 / 180 >

この作品をシェア

pagetop