オトナだから愛せない

と、再度震えたスマホは皐月くんからの着信を知らせた。
「皐月くん!」
《出るのはや》
「だって皐月くんからの電話嬉しいもん」
先ほどまでの残念な気持ちはどこえやら。皐月くんの名前を見て、嬉しくなってしまう私は本当に単純だ。
鳴ったスマホを耳元に当てれば優しい声音の皐月くん。相変わらずいい声ですね、なんて音にはせずに飲み込んだ。
「それで、それで、皐月くん!!私が送った質問の答えは?」
《あー、えーと、なんだっけ?》
「あ!!とぼけるなんてずるい!私の好きなところ教えてってやつ!」
私が問えば見事なまでに、すっとぼける皐月くん。一層清々しいよ。でもそんなに嫌ですか?私の好きなところ言うの。一応、夫婦ですよね?私の勘違いじゃないですよね?
というか皐月くんはどうして電話をしてきたのだろうか?
《じゃあ、俺の好きなところは?》
「え?」
《俺に聞くなら、胡桃も答えないとだろ?》
楽しそうな皐月くんの声音に、もしかして。いや、もしかしなくてもと嫌な予感。
「皐月くん」
《なに?》
「もしかして、それを聞くために電話してきたの?」
《……》
「ねぇ、なんで黙るの!?そーなんでしょ!」
黙りを決め込む皐月くん。絶対、絶対、絶対、図星だったんだ。電話越しで皐月くんの顔が見えないのがなんとも悔しい。