オトナだから愛せない
「言葉にするのに困ってる」




またまた、友達の由奈ちゃんのひと言に私は内心モヤモヤしていた。




『この前、彼氏と喧嘩したって言ったじゃん!』

『どきどきしなくなって、他の子と遊びに行ったってやつ?』

『そー!あれ以降、私の好きなところとか言葉にして伝えてくれるようになったの!』

『こういうところが好きだよとか、言い合うの?』

『そう!思ってたって伝わらないことなんてたくさんあるんだから、言葉にしなくちゃ!』




その話を聞いて、私はあれ?っと思った。皐月くんはあまり言葉にしない人だ、と。



でも、それが皐月くんのいいところというかかっこいいところというか。毎日私に愛を囁く皐月くんなんて、皐月くんではない。



とは、思いつつも。たまには、本当にたまに。1年に1回くらいでいいから私への愛が爆発する瞬間があったら嬉しいのだけど。




「ちょっと、聞いてみようかな……」




学校の帰り道、スマホをぎゅっと握りしめ皐月くんにメッセージを送ってみた。









もし、本当に愛が爆発していっぱい返ってきたらどうしよう。なんて、そんな淡い期待を抱いてみる。




「え、返信早い」




が、震えたスマホに、淡い期待は一瞬で蹴散らされた。









図星を突かれたが、恥ずかしいので違うことにしておく。なんでもお見通し過ぎて、怖い。皐月くんがそう簡単に私なんかが仕掛けた罠にハマるはずがないのは分かっていたけれど、悲しい。


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